セミナー

第4回採択者 松本 成美

起業初心者向け「個人事業主の経理」5つの基本

起業初心者向け「個人事業主の経理」5つの基本

個人事業主として起業したばかりの頃は、「経理って何から始めればいいの?」「これは経費にして大丈夫?」「確定申告までに何をしておけばいい?」など、不安に感じることも多いのではないでしょうか。

経理初心者がまず大切にしたいのは、難しい税務の知識をすべて覚えることではありません。「お金を分ける」「経費を判断する基準を持つ」「記録を残す」「ため込まない」という“自分で続けられる仕組みをつくること”が大切です。

2026年9月4日、筆者は幕張ビジネスポートで開催された「個人事業主のための税務・経理入門講座【第1回】起業後に困らない税務・経理の基本」に参加しました。

講師は、浅井匠也税理士公認会計士事務所の公認会計士・税理士 「浅井 匠也氏」です。

今回はその中から、経理初心者の個人事業主がまず押さえておきたい5つのポイントをご紹介します。

  • ① 売上が入ったら「税金分」を先に分ける
  • ② 経費か迷ったら「仕事に必要か」で考える
  • ③ 家事按分は「仕事で使う割合」を決める
  • ④ 経理は「月1回まとめる日」を決める
  • ⑤ インボイスは「取引先」で考える

一つずつ見ていきましょう。

ポイント① 売上が入ったら「税金分」を先に分ける

売上が入っても、すべて使わずに「税金として残しておくお金」を先に分けることが大切です。

個人事業主になると、所得税や住民税などを後から支払うことがあります。そのため、口座にお金が入っているからといって、すべて自由に使えるわけではありません。利益の計算式は下記をご確認ください。

▼利益の考え方の計算式

売上 − 必要経費 = 利益

「売上」「利益」「手元にあるお金」はそれぞれ別のものです。

今回のセミナーでは、納税用の別口座をつくり、先にお金を移しておく方法が紹介されました。さらに、一度決めて終わりではなく、3か月ごとを目安に見直すこともポイントです。

起業したばかりのうちから、「使っていいお金」と「税金のために残すお金」を分ける。これだけでも、お金の管理がぐっと分かりやすくなりそうです。これから開業する方も、事業用口座を早めに分けておくと、後からの管理がぐっと楽になります。

ポイント② 経費か迷ったら「仕事に必要か」で考える

「これは経費になる?」と迷ったら、まず仕事のために必要な支出なのかを考えます。

セミナーでは、経費と判断するときには、下記の3点を確認することを学びました。

▼経費か迷ったときに役立つ3点

  • ❶ 売上を得るために必要か
  • ❷ 事業との関係を説明できるか
  • ❸ 領収書や記録などの根拠があるか

目安は、「なぜ仕事に必要だったのか」を第三者に30秒程度で説明できる状態にしておくことです。

◆3つの質問について説明している浅井氏と受講者の様子

たとえば「仕事で着る服」でも、すべてが経費になるわけではありません。仕事専用で使うものなのか、普段着としても使うものなのか。同じように、商品撮影を兼ねた旅行や取引先との飲食なども、目的・私用部分・記録によって判断が変わります。

「〇〇なら経費」と覚えるのではなく、「なぜ自分の仕事に必要だったのか?」を説明できるか。経費で迷ったときは、まずここから考えると分かりやすそうです。

ポイント③ 家事按分は「仕事で使う割合」を決める

仕事とプライベートの両方で使うものは、仕事で使っている割合を決めて分けます。この考え方を「家事按分(あんぶん)」といいます。

たとえば、自宅の家賃なら仕事で使うスペース、電気代・通信費なら使用時間や回線、車の費用なら仕事で使った走行距離や日数などをもとに考えます。

ここで大切なのは、「何%なら正解?」と数字だけを探さないことです。なんとなく割合を決めるのではなく、「なぜこの割合にしたのか」を説明できるようにしておくことがポイントです。

ポイント④ 経理は「月1回まとめる日」を決める

セミナーでは、月1回、30分程度の「経理の日」を決める方法が紹介されました。その日に、売上の確認、銀行口座・カードの同期、未処理の登録、領収書の保存、未入金の確認などをまとめて行います。

◆カレンダーに印をつけている様子

半年後や確定申告前になってから整理すると、「これは何に使ったんだっけ?」「この会食は誰と行った?」「この入金はどの仕事?」と、思い出すだけでも大変です。だからこそ、記憶が残っているうちに「何のために使ったのか」を残しておくことも大切です。

たとえば会食なら、「会食代」とだけ記録するのではなく、「誰と・何の仕事で・何のために」まで残しておきます。また、日付・金額・相手先に加えて、用途・参加者・案件名まで記録しておくようにしましょう。

◆レシートに記録を残している様子

また、事業用の銀行口座やクレジットカードを分けておくと、プライベートの支出と毎回仕分ける手間も減らせます。

確定申告の時期にまとめて頑張るのではなく、毎月少しずつ終わらせる。まずは「経理の日」を予定に入れるところから始めてみましょう。

ポイント⑤ インボイスは「取引先」で考える

インボイスに登録するか迷ったら、まず「自分のお客様は誰なのか」を確認しましょう。

インボイスに登録すると、取引先が消費税の計算に使える請求書を発行できるようになります。一方で、登録後は原則として自分も消費税の申告・納税が必要になるため、個人事業主なら全員が登録するものではありません。

インボイスに登録するか迷ったら、まずは次のことを確認します。

  • 取引先から「登録してほしい」と言われている?
  • 登録しないことで、契約や仕事に影響しそう?
  • 登録後に消費税を納めることになっても大丈夫?

「みんな登録しているから」ではなく、自分の仕事に必要かどうかで考えることが大切です。

また、令和8年度税制改正により、インボイス未登録事業者から仕入れた場合に取引先側が仕入税額控除できる割合は、2026年10月1日から80%から70%へ変わります。

そのため、特に法人など事業者との取引が多い方は、今後の取引への影響も含めて一度確認しておくと安心です。インボイス制度は変更されることもあるため、最新情報は以下の国税庁のサイトで確認しましょう。

【国税庁「インボイス制度特設サイト」】

まとめ:初心者こそ「ためない経理」から始めよう

今回のセミナーを通して感じたのは、個人事業主の経理は、最初からすべてを完璧に理解する必要はないということです。

まずはできることから一つずつ仕組みにしていくことで、確定申告の時期の負担も減らしていけます。セミナーの最後にも、明日からできる行動を3つ教えていただきました。

▼明日からできる3つの行動

  • 1. 事業用口座・カードを決める
  • 2. 「経理の日」を毎月カレンダーに入れる
  • 3. 領収書に「何のために使ったか」を残す

私自身も、まずはこの3つを改めて習慣にしていきたいと思います。

起業したばかりで、「経理って何から始めればいいの?」と感じている方に、今回の記事が一つでも行動してみるきっかけになれば嬉しいです。

今回のセミナー講師・浅井 匠也氏について

今回のセミナーで講師を務められたのは、浅井匠也税理士公認会計士事務所の公認会計士・税理士、浅井 匠也氏です。

◆セミナーの受講者とお話しする浅井氏の様子

大手監査法人やコンサルティング会社で会計・税務の経験を積んだ後に独立。現在は、スタートアップや個人事業主の身近な相談相手として、日々の経理から確定申告までサポートされています。

今回のセミナーでは、個人事業主が起業後に困らないための税務・経理について、初心者にも分かりやすく解説していただきました。

浅井氏の事務所では、税務や会社設立などに関するコラムも発信されているので参考にしてみるのもおすすめです。
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